【野並】
「ただ、あなたが僕に会いに来てくれたことはとてもうれしかったです」

【本郷】
「よかった。俺……クシュン」

俺もそう言ってもらえるとうれしいと言おうとしたのに、くしゃみが邪魔をする。

【野並】
「あ、受験前の大事な体なのに冷えてしまったら大変です」

ふわりとあったかな布に包まれる。

【野並】
「僕のせいで風邪をひいたら、大変です」

大真面目で言ってる声が後ろから聞こえた。
ごく自然な仕草だったけど、心臓の音さえ聞こえてきそうな距離で抱き締められてる。
こんなこと、普通にしていいことじゃない。

【本郷】
「こんなこと、他の人にもするの」

【野並】
「えっ? しませんよ」

【本郷】
「気付いてる? このゼロ距離って、恋人の距離だよ?」

俺の方が体は小さいけど、俺も男だよ。
好きだって気付いちゃった人にこんなことされたら、ほらさ、やっぱりちょっと……。
一応、世間的には、ヤりたい盛りとかって言われてるし……。