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両国先生から、夏秋さんが教室にいたと聞かされても、俺には信じられなかった。
打ち合わせが終わったら、すぐ保健室へ行くって言われてたから……
絶対、両国先生の見間違いだと思っていた。
だけど……
【市ノ瀬】
「夏秋さん……」
両国先生が言っていた教室の窓辺に、確かに夏秋さんがいた。
窓枠に肘をついて、ぼんやりと外を見ている背中に、いつもの凛とした鋭さがない。
ドアの前に俺が立っているのさえ、気付いてないみたいだ。
どうしちゃったんだろう?
何か、人には言えない悩みでもあるんだろうか?
こんな時こそ、力になりたい。
大して取り柄もない俺だけど、それなりに人生経験は積んでいるつもりだ。
体力や学力では劣るけど、人生の経験値だけは夏秋さんより上だろう。
【市ノ瀬】
「夏秋さん」
俺は大きな声で名前を呼ぶと、つかつかと歩み寄った。
【夏秋】
「いつの間に……」
夏秋さんが驚いたような顔で振り返る。
俺は構わずに夏秋さんの横まで歩いていくと、ひょいっと窓枠によじ登った。
【夏秋】
「危険だ」
【市ノ瀬】
「へーき、へーき♪」
不安定に揺れる体を心配して、夏秋さんが俺の背中に腕をまわしてくる。
思ったとおりだ。
ただ横に並んで立ってるだけなら、絶対逃げられると思った。
でも、夏秋さんは優しいから、バランスがうまくとれない俺から離れることはできないに違いない。
【夏秋】
「なぜここへ……」
夏秋さんは、かなり戸惑っているようだ。
困ったような視線が、俺を見ては、すぐに離れていく。
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